福岡高等裁判所那覇支部 昭和56年(ネ)45号・昭56年(ネ)27号 判決
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【判旨】
二ところで、右争いのない事実のごとく本件三日会の会員が未落札のまま中途脱会した場合において、満会の日に返還されるべき払込掛金の範囲につき、被控訴人は、右掛金全額の返還をする約定であつた旨主張するのに対し、控訴人は、それから更に割戻金合計を控除した残額を返還する約定であつた旨主張するので、この点について検討する。
1 <証拠>によれば、本件三日会の模合帳簿中にある模合規約には、「本模合に加入し途中にて脱会を希望する場合掛金は本模合最終の時掛金を無利子にて支払うことを約す」(第一二条)との、被控訴人の主張に副うかのような記載のあることが認められ、また<証拠>中にも右同旨の記載及び供述部分がある。
2 しかしながら、(1) <証拠>によれば、本件三日会の座元である控訴人は、右模合運営のため、前記第一二条を含む模合規約が印刷された不動文字で記載されている市販の模合帳簿を利用したにすぎないことが認められるし、原審証人金城恒夫の証言中には、本件三日会において未落札者の中途脱会の場合における返還金額の取り決めはなかつたように思う旨、また原(第二回)・当審における控訴人本人尋問の結果中には、控訴人は右返還金額につき自己の前記主張のとおりとする旨会員に説明した旨の各供述部分があること、(2) 原審証人仁井保名が本件三日会の会員ではなく、また同人がその加入していた他の模合の中で未落札の中途脱会者が出たような事例に接したわけでもないことは、<証拠>に徴して明らかであること、(3) <証拠>によると、金城恒夫も、本件三日会の第五回期日以降徳永の別の未落札二口を承継し、一〇回にわたつて掛金を支払つたうえ中途脱会したが、昭和五四年四月三日、その払込掛金の返還債権と、控訴人に対する確定判決に基づく徳永らとの連帯債務(元本二八九〇万円余)とを精算するに当り、右一〇回分の掛金合計から割戻金を控除した残債権をもつて相殺計算していることが認められること、(4) <証拠>によれば、本件三日会と同趣旨の控訴人座元の別口模合につき、控訴人と中途脱会者との間で掛戻金債権と払込掛金返還債権の存否が争点となつた別件訴訟(那覇地方裁判所昭和五一年(ワ)第五〇一号、昭和五三年(ワ)第三四一の一号事件)において、本件三日会の会員でもある上原清善は、右掛金返還債権の範囲について控訴人の前記主張に副う証言をしており、これと同趣旨の判断に出た同事件の判決が確定していることが認められることなどの諸事情があり、(5) 原(第一、二回)・当審における控訴人本人尋問の結果のほか、原審における被控訴人本人尋問の結果中にも、控訴人の右主張に副う供述部分がある。
3 そして、前記一の争いのない事実によると、本件三日会は、座元たる控訴人がその事業として会員を募集し、自己の責任において運営するものであるから、座元と会員との間には個々的な契約が締結されているものと認められ、したがつて会員の中途脱会の場合については、契約解除の一般原則に従つて座元との関係を解決するのが相当である。しかるに、未落札の中途脱会者も、各期日にその加入口数に応じた掛金を支払うとともに、落札者の入札金額に相当する割戻金を受領しているのであるから、被控訴人主張のごとく満会時に払込掛金全額の返還を受けるものとすれば、割戻金はいわば前払利息のような観を呈し、出捐額を超える金額を取得することになる。またこのようないわゆる非組合的模合の座元にあつては、掛金ないし掛戻金を支払わない会員があるときは、自らその分を立替えて他の会員に支払わなければならないし、経済的には一種の団体性を有し、総掛金をもつて総給付金を支弁し、口数も一定している以上、中途脱会者が出た場合にも、これを承継すべき者がいない限り、自らの責任でその加入口数を填補せざるをえず、必要以上の負担を免れないのであるから、中途脱会者につきその割戻金を控除して精算するとした場合、右割戻金相当額が計算上座元に帰するとしても、これをもつて不当な利得というのは当らない。
4 そこで、以上の諸事情を勘案して考察すると、前記1の記載及び供述部分は、被控訴人の前記主張の的確な証拠であるとはいい難いし、他にこれを認めるに足りる証拠もない本件にあつては、中途脱会した本件三日会の未落札会員の払込掛金の返還につき、控訴人の前記主張のとおりに約定されたものと認めるのが相当であつて、前記模合規約の文言も、措辞必ずしも分明ではないが、払込掛金合計から割戻金合計を控除した残額を満会の時に無利子で支払う旨約したものと解釈するのが合理的というべきである。
なお、控訴人は、右脱会につき座元の同意が必要である旨の主張もするが、座元と会員との間の前記のような法律関係に照らし、そのように解すべき根拠はないから、右主張は採用できない。
三<省略>
四進んで、控訴人の抗弁(二)について判断する。
1 本訴請求債権にかかる本件三日会の未落札一口につき、第一回ないし第五回までは徳永が、第六回ないし第一五回まではその承継者の被控訴人が、それぞれ掛金を支払つたことは前記のとおりであるところ、当審における被控訴人本人尋問の結果によると、被控訴人は、徳永から右未落札一口を含む前記二口を承継するに際し、自己の徳永に対する貸金債権五〇〇万円をもつて、承継前の徳永の払込掛金合計五〇〇万円と相殺計算したことが認められるが、本件三日会において未落札会員に対する割戻金の交付が模合契約の主要な内容となつていることは当事者間に争いがないので、右割戻金の交付のあることを前提として前記二口の承継がなされたというべきであり、座元との関係は承継当事者間だけの対価関係いかんによつて左右されるべきものではないから、前記未落札一口の第一五回までの払込(徳永の払込分を含む)掛金合計七五〇万円の返還に当つては、前記二の認定判断に従い、本件三日会の会員たる地位(権利・義務)の承継者である被控訴人につき、その被承継者である徳永の取得した第五回までの割戻金をも控除の対象とするのが相当である。そして、<証拠>によれば、前記一口に対する第二回ないし第一五回の割戻金合計は控訴人主張の二〇四万九〇〇〇円であることが認められるから、これを右掛金合計から控除すると残額は五四五万一〇〇〇円となり、その返還債務が満会の日限りで遅滞に陥つたことは明らかである。
そうすると、被控訴人は、控訴人に対し、右五四五万一〇〇〇円及びこれに対する遅滞に陥つた日の翌日である昭和五一年六月四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金債権を取得したものといわなければならない。
2 一方、被控訴人の既落札一口につき第一六回ないし第二〇回の未払掛戻金合計二五〇万円が残存していることは被控訴人の自認するところである。そして、<証拠>によると、本件三日会には控訴人主張のような掛戻金の支払に関する期限の利益喪失の約定と遅延損害金の約定があることが認められ<る。>
そうすると、控訴人は、被控訴人に対し、右二五〇万円及びこれに対する被控訴人が当該期日の掛戻金の不払を自認し、したがつて前記約定により全部につき遅滞に陥つた第一六回期日の翌日である昭和五一年二月四日から支払済みまで約定利率の範囲内の、控訴人主張にかかる年三割の割合による遅延損害金債権を有することとなる。
3 控訴人が昭和五八年八月二日の当審第一二回口頭弁論期日において右2の債権をもつて前記1の債権と対当額において相殺する旨の意思表示をしたことは訴訟上明らかであるから、両債権を相殺適状の日である昭和五一年六月四日の時点で差引計算すると、被控訴人の控訴人に対する右1の残債権は二七〇万一〇〇〇円及びこれに対する前同日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金となる。
4 控訴人は、更に、被控訴人が徳永から本件三日会の二口を承継するに当り、控訴人に対し、八日会の精算につき控訴人と組み合わされた仁井から自己の債権を回収しない旨確約したことを前提として、被控訴人に対する債務不履行若しくは不法行為による損害賠償債権をも自働債権とする相殺の主張をするが、右前提事実を肯認するに由ないことは上来の認定判断に徴して明らかであるから、右主張は失当たるを免れない。
5 してみると、抗弁(二)は、前判示の限度において理由があるものというべく、結局、被控訴人の本訴請求は、控訴人に対し、前記3の残債権元本二七〇万一〇〇〇円及びこれに対する前記遅滞の翌日より後の、被控訴人が付帯金の始期として自認する昭和五三年一二月一日から支払済みまで前同様の遅延損害金の支払を求める限度においては理由があるから正当としてこれを認容すべきであるが、その余は失当として棄却を免れない。
(惣脇春雄 比嘉輝夫 篠原勝美)